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推し九谷 令和7年度審査結果
石川県九谷焼美術館の展示作品にオリジナル作品名を命名するイベント
を
以下の内容で開催しました。
【会期】令和7年8月2日~12月14日
【対象】小学校~高校生
応募総数147点のうち、次の7点を秀作として選定いたしました。
なお、審査結果において最も得票数が多かった応募作品を「一推し(いちおし)」とし、以下得票数別に「二推し」「三推し」となっています。
※命名した作品名、命名理由、ペンネームについては、原文ママ記載
一推し

古九谷 花鳥図平鉢
命名理由
1羽の鳥はまるで空に向かって父や母を呼んでいるようで、もう1羽の鳥は待ちくたびれ、空を見つめているように感じとれたから。
なかなか呼んでも帰ってこない父母を待っているようなふんいきが少しうかんでいる雲とかから静かな感じで伝わってくる
命名者 紗香(中1)
ニ推し

松山窯 双馬図平鉢
命名理由
ニひきのお馬がたのしくしっぽをふりながらダンスをしているようにみえたから
命名者 寧音(小4)

松山窯 山水家屋図七宝文大平鉢
命名理由
こまかくて、よく見るとたて物の中に人がいたりしておもしろいところが好きです。
命名者 ハル(小5)
三推し

松山窯 瓜に花図小皿
命名理由
いちまいずつちがうから
命名者 あおはさん(小1)

初代中村秋塘 竹に菊図蓋付急須
命名理由
お花や葉などが描かれた蓋に、小さな穴があって、その中をのぞいてみたいから。
お花や葉は描いた人の瞳へ写った記憶だと思った。
命名者 らんぴ(高2)

北出塔次郎 錦繍手双蝶図飾瓶
命名理由
正面に描いてある蝶が人の顔に見えたから。
この蝶は、誰が見ても人の顔に見えてしまうというところから「不可避」とつけた。
命名者 なり(中3)

松山窯 双馬図平鉢
命名理由
馬がまわるように見えたから馬がダンスにしました
命名者 いっちゃん・いっちー(小3)
講評

村瀬 博春 (むらせ ひろはる)
石川県九谷焼美術館館長
1982年石川県美術館(旧館)、1983年石川県立美術館(新館)学芸員勤務を経て現在は石川県九谷焼美術館館長。
石川県生まれ。
上智大学文学部哲学科卒業後、北陸先端科学技術大学院大学に進学、博士号(知識科学)を取得する。
研究領域は日本美術工芸史、工芸論、博物館学、日本文化史など多岐にわたる。
今年度も「推し九谷」にたくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。
皆様の力作を拝見しながら、この取り組みは、美術館が今日の社会で果たすべき大切な役割の一つなのだと、あらためて身の引き締まる思いがいたしました。
ここ数年、「言語化」という言葉がよく聞かれるようになりました。「推し」とは、自分が気に入ったものを、自分の言葉で伝えることですから、まさに言語化を練習するのにぴったりの場といえます。
なぜその練習が必要なのかというと、私たちは実は“言葉で言える以上のことを知っている”からです(We know more than we can tell.)。これは、知識のあり方を探究した科学哲学者マイケル・ポランニーの考えで、経験や感覚の中には、すぐには言葉にできない大切なものがたくさん含まれている、という意味です。
そこで「推し九谷」では、皆様に命名の理由をお尋ねしています。作品を前にして言葉を探すとき、皆様はきっと自分自身と対話しているのではないでしょうか。自分がどこまで理解しているかを確かめる。美術館は、このような機会を提供することで、急いで答えを求めがちな現代社会に、ささやかながらも一度立ち止まる場をつくりたいと願っています。
なぜなら、何でもすぐに言語化できる人が“頭のいい人”と見なされ、その明快な言葉に気づかぬうちに同調してしまうことがあるからです。気がつくと、対立や分断を生むことに加担してしまう心配もあります。だからこそ、「推し」を通して、自分の言葉と、それを考える時間を大切にしていただきたいのです。
もう一つお伝えしたいのは、九谷焼を作った人の気持ちにも、ぜひ思いを寄せていただきたいということです。記録が残る作者であれば、作品がどの時期に作られたのかを調べ、そのときの作者の心境を想像してみてください。作者がわからない作品でも、どのような考えをもつ人が作ったのか、手がかりを探すことはできます。美術館にはたくさんの資料があり、学芸員も喜んでお手伝いしますので、どうぞ気軽に声をかけてください。
作品を鑑賞することは、ある意味で、別の人の人生に触れることでもあります。そこから他者への思いやりの心が育まれれば、いじめや暴力のない社会に近づいていくはずです。私たちは、「推し九谷」をとおして、このようなことも願っています。