石川県九谷焼美術館の展示作品にオリジナル作品名を命名するイベント
を
以下の内容で開催しました。
【会期】令和6年8月3日~12月15日
【対象】18歳以下
応募総数113点のうち、次の7点を秀作として選定いたしました。
なお、審査結果において最も得票数が多かった応募作品を「一推し(いちおし)」とし、以下得票数別に「二推し」「三推し」となっています。
※命名した作品名、命名理由、ペンネームについては、原文ママ記載
一推し

吉田屋窯 染付鉄絵山水図六角火入
命名理由
色絵ではなく、鉄絵で素朴に描かれていることから、おぼろげながらに思い出す故郷の風景のように感じた。ノスタルジックな作品である。
命名者 おこげ(高1)
ニ推し

木崎万亀 金襴手急須
命名理由
下のほうがふくらんでいるから。赤の色も金の色もふんどしの色にあるから。
命名者 あー(小5)

古九谷 色絵李白観山図隅切角皿
命名理由
したをむいた人がつかれたようにみえるから
命名者 エノグ(小3)

北出不二雄 彩釉陶花菖蒲器
命名理由
お花をかざらなくてもいいような、きれいで細く書かれているしょうぶがあったから。
命名者 つき(小5)
三推し

吉田屋窯 三夕詩入鉦鉢
命名理由
青色や薄い緑色の美しい彩色の中に、歌留多の遊び心が感じられる作品で非常に興味が湧いたから。このオリジナルの名前も上記の考えを参考にしました。
命名者 明雄(高3)

北出塔次郎 渡り蟹図飾皿
命名理由
海の生き物たちがたわむれているようにも見えるし、争っているようにも見えるから。
見方やその人の考え方によってとらえ方が異なり、面白い作品だと思った。
命名者 おひな(中2)

木崎万亀 金襴手急須
命名理由
きんきらだから
命名者 ソーイ(幼稚園)
※こちらの「ソーイ」さんの連絡先が未記入のため、ご連絡ができませんでした。お心当たりのある方、茶房古九谷までご一報をお願いいたします。
講評「コメントを拝見して」

村瀬 博春 (むらせ ひろはる)
石川県九谷焼美術館館長
1982年石川県美術館(旧館)、1983年石川県立美術館(新館)学芸員勤務を経て現在は石川県九谷焼美術館館長。
石川県生まれ。
上智大学文学部哲学科卒業後、北陸先端科学技術大学院大学に進学、博士号(知識科学)を取得する。
研究領域は日本美術工芸史、工芸論、博物館学、日本文化史など多岐にわたる。
先頃逝去された高階秀爾先生は、ある講演で山上憶良の“妻子(めこ)見ればめぐしうつくし(妻と子を見ると切ないほどかわいくいとしい)”を引いて、日本において美は当初愛情表現だったと紹介されました。
今回「推し九谷」に寄せられた皆様のコメントを拝見して、改めて奈良・平安時代から日本人の美意識は大きく変わっていないと思いました。人間同士の恋愛であれば、好きに理屈はいらないとも言えますが、美術作品の場合は、思いを言葉にすることで、作品と心が通い合うのではないでしょうか。
それは、作品を介した自分自身との対話でもあります。美術館に展示されている作品は、何年も、時には何十年も変わりません。しかし、それを見る自分は時々刻々変化していきます。その中で、人生の友、あるいは師と思えるような作品との絆が生まれることがあるとすれば、それはとても幸せなことだと思います。
若い時に作品に寄せた素朴な感情は、自身の成長とともに変わることもあれば、変わらないこともあります。私自身、作品の研究をしながら、小中学生の頃に感じた印象が核心を突いていたと思うことがしばしばあります。そして今回の皆様のコメントにも鋭い指摘が多く見受けられ、新鮮な驚きを覚えました。
皆様は、これから様々なことを学びます。そして学びによって、言葉による表現も豊かになっていきます。そうしたときに、今回推した九谷を振り返ってみてください。作品には、言葉を超えた「何か」があると気づくかも知れません。この「何か」こそが、人々を創造的活動に向かわせる原動力だと思います。
今日ではAI(人工知能)もアートを制作します。しかし、美術館に展示してある作品と何年にもわたって絆を深めていくことは、効率性を第一とするAIには理解できない非効率的な営みです。しかし、この非効率性にこそ、人間が人間であることの意義があると思います。今回の「推し九谷」をきっかけに、これから美術館に何度も足を運んでください。そしてゆっくり流れる時間を楽しみながら、ご自身の人生と静かに向き合ってみてください。石川県九谷焼美術館は、人生を考える「場」としての最低限の環境は整っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。この点についても、皆様のご意見をお伺いしたいと思っております。