──いろんな土を試されて、いま花坂の土ってことは、それが肌に合うんですか。

最終的にやっぱり上絵っていう仕事だよね。そっちが面白そうだっつーんで。

──絵がのりやすいというのがあるんですか。

いや、絵付け自体、面倒ですよ。だって土ものだったら窯から出したらそれでおしまいだもん。上絵付けはそれからが大変なんです。
区別してほしいのは、素地からやってる人と、絵付けしかやってない人がいま同居してるのよ。そこをよ~く差別化してほしいんだよな(笑)。
われわれは立体造形のほうですよ。形が見せ場っていうわけじゃないけど、そのへんを絵付けする人たちはわかってない、ただのキャンバスなんだよな。そこをちょっと突っ込んでほしいね。加賀市の人はわりに自分でつくってる人多いけどね。

──形をつくるほうと絵付けと、どっちが好きというのはありますか。

そういう問題じゃなくて、ひとつのセットなんだよね、あたまっから。上絵つけて形が完了するんで、選んで物はつくれないんだよね、どうしても。

──形をつくっているときから絵を?

そう、最初にもう絵を描くんだよ。それから始めないと。あんまりうまくはないんだけど。
こういうのをしてから、始めるわけですよ。形をつくるのをね。


──スケッチで描いてしまうと、また同じものを描くのは大変じゃありませんか。

うん。大変だけども、仕事違うじゃない。で、おんなじものできるわけないもんな、だいたい。近いんだけど、まずおんなじものはできあがらんな。形違ったり。それに色がね。結果がわりに見えてるようで見えてないんだわ。絵描いてんのよ、しっかりと。でも違う結果がくるんだよ。

「絵が得意だったんですか?」なんてこともよく聞かれるけど、工芸なんてのは、90%は技術だからね。1割くらいですよ。なんつーの、妙なものが入ってくるのは。

──縞々の作品が多いですが、お好きなんですか。

縞使うのはね、単純だからいいんですよ。考えることが多いんだわ、いっぱい。複雑なやつっていうのはね、なんていうの、それだけですむでしょうよ。単純だから、一生懸命、色とか考えなくちゃだめなんですよ。そういうのが一番面白いと思うんだよな。
根が飽き性だから、おんなじものをつくるのはあんまり得意じゃないんですよ。形は一緒でも全部色変えるとか。それは見ていただければたぶんわかりますけれども。
幅、形、色、組み合わせ、全部だよな。染織の縞帖って知ってる? あれを見るとよくわかる。


《いろえ金彩香炉》

《縞帖》

──もみじとか日本風のものも描かれてますよね。

あれは日本風じゃないんだよ。あれは自分の環境なんだよ。あなたの環境でもあるんですよ。なんで日本風っていうの? なんで梅が日本風なのよ。中国にだって梅はあるよ(笑)。
われわれはほら、真夏にだって梅の花を描いてるわけですよ。季節感でものをつくってないんですよ。自分の単なる気持ち。だから、春に落ち葉を描いたり。真冬に桜を描いたりってのもありえますから。でもほら、商品として出すと、どうしても、秋のうつわ展だとか、そういうこだわりを言われるからね。


《いろえ金彩紅葉鉢》

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