細やかな、伸びやかな線で描かれた染付のうつわ。品があり、使う時間に優雅ささえ与えてくれる。そんな作品を若いお弟子さんたちと共に作り、彼らを指導されてもいる山本長左さん。加賀市の伊切町で、弟である山本篤さんと同じ建物内で制作を行う長左さんを訪ねた。
──長左さんの作品の特徴について教えてください。

基本的なデザインのベースは、自分の好きなものなんです。それでブルーが多いですね。私の場合は、まあ弟が作った形が一番好きなんですけどね。相談して形決めたりもします。薄さとかね、重さとか、大きさとか。まあ喧嘩もよくしますけど。
中国で言うと、元の後期から明の初期・中期くらいまでの仕事が好きなんです。それがちょうど古九谷のルーツなんですね。で、それは私の得意分野でもあるんです。

──お使いの色について教えていただけますか?

そうですね、僕はブルーが好きでこれを使ってるんです。もっと発色の強いブルーもあるんですけど、飽きちゃうんです。飽きがこないっていうのが、ひとつのキーワード。不純物がすごく多い、精製をきちっとしてないブルーです。染物もそうですよね。合成染料で染めたのと、天然の藍で 染めたのとは違うんですよね。だから、どっちかって言うと、天然の藍のような仕事をしたい。
(中国呉須は)不純物が多いんです。ところが、不純物が多いから味が出るんですよ。きれいに 精製すると、ほんとに味気ないですよ。逆に言うと、不純物が多いっていうのは自然でしょ、鉱物の場合。砂が混じることも、泥が混じることもある。その混じって、微妙に色がふらつくのがいいんですよ。

──色絵も勉強されたとお聞きしましたが、染付のほうにいかれたのはなぜですか?

使えるものが好きだったんです。飾るものよりも、使ううつわ。うつわって考えると、色絵があると、お料理が映えるかというと、逆にお料理と競争しちゃう。お料理は、たとえば今だったらピーマンにしたって、トマトにしたって、緑も黄色も紫もなんでもあるでしょ。そしたら、ブルーって色はないんです。ブルーって、暗い色だから、上にある色を映えさせる。全国的に見たら、そんなに珍しい色ではないんですけど、この加賀地方の持ってる、ものの作り方とか、仕事の仕方とかで、やりたかった。
それとやっぱり、オンリーワン。同じ焼きものでも、たとえば、みんながやっている色絵でやると、自分としてはなかなか難しいなと思ったから…。あんまり誰もその頃やってなかったんです。今はやってる人いるけどね。だからそういう染付ということとか、弟と一緒に手仕事の質感とかっていうのでやりたかった。


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